ディープラーニング(深層学習)とは?ディープラーニングの仕組みから活用事例まで解説
更新日:2024年03月27日
公開日:2024年03月27日
ディープラーニングとは人工知能の一つで、大量のデータ解析が可能な技術です。AIとの違いや活用方法がわかると、日常生活や業務効率化に役立つ可能性があるでしょう。
この記事では、ディープラーニングの概要や仕組み、活用事例について解説します。
目次
ディープラーニング(深層学習)とは?
ディープラーニングとは人工知能の一分野で、人間の脳の仕組みを模倣した技術です。一般的にはディープラーニングという名前ですが、深層学習、DLと呼ばれることもあります。コンピューターにより大量のデータを解析し、それぞれのデータの特徴を抽出するというシステムです。
ディープラーニングが身近に使われている例として、以下のシステムが挙げられます。
- 写真やビデオから物体を認識し分類する例
- 顔認証システム
- 自動運転技術の資格システム
- 人間の言葉から意味や感情を認識し分類する例
- チャットボットサービス
- 自動翻訳システム
- システムから異常を認識し分類する例
- 製造ラインの品質管理システム
- 金融取引の不正検出システム
上記からわかるように、ディープラーニングは今や私たちの日常生活に浸透している技術です。
なぜディープラーニング(深層学習)が重要なのか?
ディープラーニングが重要視されている理由の一つに、商品やサービスの生産性や質を向上させたいというニーズの存在が挙げられます。世の中ではデジタル化がすでに浸透し、人々は膨大なデータの蓄積ができるようになりました。しかし、従来のデータ処理手法では、大量のデータの中から有益な情報を効率的に抽出するのが難しくなりつつあります。
ディープラーニングを用いると、膨大なデータ処理はもちろん、質の高い業務の自動化も可能です。たとえば、カスタマーサービスの自動化や顧客への商品レコメンド機能により、顧客はよりパーソナライズされたサービスを受けられます。生産性が向上すると商品やサービスの質にもこだわれるため、結果的に市場での競争力を高めることもできるでしょう。
ディープラーニングは生産性と品質の向上を促し、新たな価値を見出せる点で重要視されています。
ディープラーニング(深層学習)の仕組み
ディープラーニングは、人間の脳のシステムをコンピューターに模倣した技術です。人間の脳は複雑なネットワークでできており、ニューロンという小さな部品が無数につながり成り立っています。人間が学習や思考ができるのは、ニューロンが情報をやりとりしているためです。
ディープラーニングにも、ニューロンを模倣し思考や学習ができるネットワークが作られています。ネットワークはいくつもの層からなっており、入力された情報を次々と加工。最終的に人間がほしい答えを導くという仕組みです。
なお、ディープラーニングの「ディープ」は、ネットワーク層が無数に重なっていることを意味します。ネットワーク層が多いほど、コンピューターはより複雑な内容を学ぶことが可能です。
ディープラーニング(深層学習)とAIの違い
ディープラーニングはAIの一つで、学習する力に焦点をあてた人工知能であるといえます。AIは、コンピューターに対して、人間のように学習や思考する能力を持たせる技術です。例として、スマートフォンのSiriやGoogleアシスタントのような音声アシスタントなどがあてはまります。
ディープラーニングはAIの一分野で、中でも学習能力に特化した人工知能です。ディープラーニングでは、人間の脳が情報を処理するシステムをまねて、コンピューターに大量のデータを学ばせます。
つまり、AIはコンピューターに人間のような知能を持たせる大きなくくりであり、ディープラーニングはその中の一つの「学習させる方法」と考えるとわかりやすいでしょう。
ディープラーニング(深層学習)と機械学習の違い
ディープラーニングは機械学習の一つですが、それぞれが持つ能力に違いがあります。
機械学習は人間から与えられたデータから学び、予測や判断を行う技術です。たとえば、音感センサーつきの照明に「暗い」という単語を教育しフレーズを発すると、点灯するようにできる可能性があります。しかし「暗い」以外の単語に反応させるには、再度学習が必要です。
一方、ディープラーニングは、データを与えるだけでコンピューターが独自に学習していきます。音感センサーつきの照明にディープラーニングを用いれば「スイッチはどこ?」「何も見えない」などの「暗い」以外の言葉も自動で学習し、点灯する可能性があるでしょう。
機械学習の学習能力にはある一定の限界がありますが、ディープラーニングは人間が何度も手を加えなくても自動で学習が可能です。
ディープラーニング(深層学習)の種類
ディープラーニングには5つの種類があり、それぞれ特定の問題を解決できます。ここでは、ディープラーニングの種類と仕組みについて解説します。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は、主に画像の認識に使われるネットワークです。たとえば、写真の中から犬や猫などを判別して見つけ出したり、画像が何を表すのかを判断したりすることが得意です。
CNNは写真を小さなピースに分けて、それぞれが何を表しているかを学習することで内容を判断します。猫の写真なら耳や目、鼻といった特徴を見分けることで画像の区別が可能です。CNNの仕組みは、人間が写真を見て何が写っているかを理解する過程に似ているともいえます。
RNN(再帰型ニューラルネットワーク)
RNN(再帰型ニューラルネットワーク)は、文章や音声など前後の情報が関連しているものを処理する際に使われます。たとえば、私たちは文章を読むとき、前の文を覚えておくことであとの文脈をよりよく理解できるものです。
RNNは過去のデータを記憶し、分析した結果からものごとを判断します。情報を一時的に記憶しておけるため、文章や音声の流れをうまく捉えられるというシステムです。
LSTM(長短期記憶)
LSTM(長短期記憶)はRNNの仲間ですが、RNNよりさらに長い情報を覚えておくことができます。LSTMは、入力ゲートと出力ゲートの間に「忘却ゲート」を作り、不要な情報を忘れさせるようにしたものです。
LSTMを用いると、長い文章や会話の中で最初に出てきた情報を最後まで覚えておくことができます。人間が話を聞くときに大切なポイントを記憶し、あとで思い出せるようにするシステムに似ているといえるでしょう。
オートエンコーダ(自己符号化器)
オートエンコーダ(自己符号化器)は、データを効率的に圧縮したのち復元する方法を覚えるネットワークです。大量の写真や音楽を小さなスペースに保存しておき、必要なときに元の形に戻すことができます。
オートエンコーダは、圧縮と再構築を自動で行う過程で特徴を学習し、データを表現する新しい方法を見つけ出すことが可能です。なお、写真に限らず音声やテキストなどのさまざまなデータに対応できます。
GAN(敵対的生成ネットワーク)
GAN(敵対的生成ネットワーク)は、新しいデータを作り出す際に使われます。実在しない人物の写真を作ったり、絵画のスタイルを模倣した新しい画像を生成したりすることが可能です。
GANは敵対的生成ネットワークという名前のとおり、2つのネットワークが互いに競争しながら学習を進めます。一方が本物そっくりのデータを作る「生成者」で、もう一方がそのデータが本物か偽物かを見分ける「識別者」です。両者が競争することで、より本物に近いデータを作れるようになります。
ディープラーニング(深層学習)でできること
今やディープラーニングは、日常のさまざまな場面で活用されています。ディープラーニングの用いられ方や、活用されているサービスについて理解しましょう。
画像認識
画像認識とは、コンピューターが画像内の物体や人物、風景などを自動で識別する技術です。動作は、前章で説明したCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を用いて行われます。以下は、画像認識が活用されているスマートフォン機能の例です。
- ロック画面の顔認証システム
- アルバムの顔識別機能
ディープラーニングを用いるとコンピューターは数多くの画像を学習し、パターンを見つけ出します。パターンを見つければ、新しい画像を取り込んだときに何が写っているかを認識することが可能です。
音声認識
音声認識とは、人間の話す言葉をテキストに変換したり、音声コマンドを理解したりする技術です。動作には、前章で解説したRNN(再帰型ニューラルネットワーク)やLSTM(長短期記憶)などが用いられます。以下は、音声認識が用いられるサービスの例です。
- スマートフォンの音声アシスタント
- スマートスピーカー
- 議事録作成ツール
ディープラーニングによりさまざまな言葉やアクセント、話し方を学習し、より正確に人間の声を認識できるようになりました。日本語の標準語だけでなく、地方独特の方言や外国語など、多様な話し方の区別が可能です。
自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)は、コンピューターが人間の言葉を理解し、文章や音声を生成する技術です。動作には、前章で解説したRNN(再帰型ニューラルネットワーク)やLSTM(長短期記憶)などが用いられます。以下は、自然言語処理が用いられるサービス例です。
- 自動翻訳
- チャットボット
- コールセンターでの問い合わせ対応
自動言語処理を用いると、チャットボットでの応答や文章要約を自動で行えます。膨大なテキストデータであっても、ディープラーニングにより言葉の使い方や文脈を学習し、より自然な言い回しの生成が可能です。
異常検知
異常検知は、数あるデータの中から異なるパターンを見つけ出す技術です。動作には、前章で解説したオートエンコーダ(自己符号化器)や、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)などが用いられます。以下は、異常検知の活用例です。
- 製造業での品質管理
- セキュリティシステムでの不審な行動の検出
ロボットなどに取り付けられたセンサーからデータを取得し、以前の情報と比較し異常がないかを判断します。ディープラーニングを用いると、人の目よりも確実に異常を検知することが可能です。
ディープラーニング(深層学習)の活用事例
ディープラーニングが、社会でどのように活用されているか気になるところです。ディープラーニングの活用事例を知り、日常や仕事に取り入れられそうなサービスを見つけましょう。
自動文字起こし
自動文字起こしは音声データを文章に変換する技術であり、会議の記録や講演内容のテキスト化などに活用されています。自動文字起こしが使われているツールの一つが、議事録作成ソフトです。会議で話し合われている内容をリアルタイムで文字起こしし、文章をあとから議事録作成に用いることができます。
地域特有の方言や外国語の判別にも長けており、どのようなアクセントでも高い精度のテキスト変換の実現が可能です。自動文字起こしを使えばメモを残す手間が省け、会議や公演の内容に集中できます。
自動翻訳
自動翻訳技術は、テキストや音声を異なる言語に翻訳する技術です。たとえば、自動翻訳機能がついているWeb会議ツールを使用すると、会議音声をリアルタイムで翻訳できます。異なる言語のやりとりであっても、わざわざ通訳者をつける必要がありません。
単語やフレーズの直訳ではなく、文脈を理解し自然な翻訳を行えることも特徴の一つです。自動翻訳を活用すれば会議や旅行中の会話のストレスから開放され、世界中の人々とのコミュニケーションがスムーズになります。
オンライン画像検索
オンライン画像検索は、特定の画像や関連のコンテンツを見つけられるようにする技術です。たとえば、Google画像検索は、ユーザーが写真をアップロードすると画像の内容を理解し、関連性の高い結果を表示します。
また、画像をアップロードして類似のイメージを検索することも可能です。写真家や画家などのアーティストが、自分の作品が許可なく使用されていないかを確認する場合にも有効です。
自動運転
自動運転技術は、自動車が周りの環境を認識・判断し、自動で運転操作をする技術です。日本のブランドでは、ホンダのLEGENDやトヨタのe-Paletteなどに技術が実装されています。
自動運転車はカメラやセンサーから膨大なデータを処理し、目の前の交通状況を理解するため安全な走行が可能です。ただし、自動運転車には正確性や安全性の精度によって1から5までのレベルづけがされており、2023年の時点での最高レベルは3となっています。今後、自動運転の精度がさらに上がれば、事故の減少や交通の効率化が期待できるでしょう。
ディープラーニング(深層学習)を理解し業務や日常生活に役立てよう
ディープラーニングは人間の脳を模倣した人工知能であり、自ら学習を進めてユーザーのリクエストに答える技術です。今や日常のさまざまな部分に浸透しており、顔認証やチャットボットなどにも用いられています。ディープラーニングについて理解し活用すれば、日常生活や仕事の質をさらに上げることも可能です。
ディープラーニングの仕組みや用いられているサービスについて理解し、自身の身の回りに役立てましょう。